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DNAを遺す代わりに
書くことは喜びであり、同時にこの上ない辛苦です。
一文を書く毎に、自身の感性の籠から、大事な宝物を乱暴に掻き出されていくかのよう。
『この宝物は、私が幼き日から、ひたすらに美しくグラデーションを描くようにと、幾重にも織り進めてきたものだ』
籠の奥底、その宝物の残量を直視することが恐ろしく、目を背けた私は文机に齧りつく。
それでも敢えて筆を執るのは、ひとえに、十年後のある朝に、私の成した歴史には確かに意味があったのだと、今の日々を振り返ることができるようにと、願うからです。
もしかしたらそれは、自分が生きた証をこの世に遺したいという、生命の切実な叫びの姿であるのかも知れません。